新NISAで積み立てた資産を、いつ、どうやって売ればよいか迷っていませんか。
新NISAは非課税で持てる期間に期限がないため、売る時期と金額を自分で決める必要があります。
売り方を先に決めておけば、相場が下がった場面でも慌てて売らずに済むでしょう。
本記事では、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格を持つ筆者が、新NISAの出口戦略を解説します。
取り崩し4つの方法の違いや、売却後に非課税枠が戻る条件まで分かります。
新NISAの出口戦略とは

新NISAの出口戦略とは、積み立てた資産を「いつ・いくら・どうやって売るか」をあらかじめ決めておくことです。
2024年から始まった新NISAでは、非課税で保有できる期間が無期限になりました。
売却の期限が決まっていないため、売る時期と金額は自分で決める必要があります。
売る時期を決めずにいると、お金が必要になった時点の相場で売ることになります。
売る時期が値下がりの時期と重なれば、予定より少ない金額しか手元に残りません。
出口戦略を立てておけば、使う時期から逆算して売却の計画を組めるでしょう。
新NISAの出口戦略を決める前に確認する3つの数字

出口戦略を立てる前に、次の3つの数字を書き出しましょう。
- 使う予定の金額
- 取り崩しを始める年齢
- NISA口座以外にある現金の額
3つの数字がそろうと、売り方と売る時期を具体的に決められます。
いつ・いくら使う予定かの金額
最初に、新NISAの資産を何に、いつ、いくら使う予定かを書き出します。
使う予定が決まると、売る時期と売る金額を逆算できるためです。
たとえば、子どもの大学入学が8年後で、入学金と初年度の学費に150万円が必要だとします。
この場合は、8年後の春までに150万円を用意する計画を立てることになります。
老後資金の場合は、公的年金だけでは足りない毎月の金額を書き出しましょう。
使う目的ごとに時期と金額を表にしておくと、売却の計画を立てやすくなります。
取り崩しを始める年齢
次に、新NISAの資産を取り崩し始める年齢を決めます。
取り崩しとは、保有している投資信託や株式を少しずつ売って現金にすることです。
取り崩しを始める年齢が決まると、それまで運用を続けられる年数が分かります。
たとえば45歳の人が65歳から取り崩すと決めた場合、運用できる期間は残り20年です。
65歳以降も働いて収入があるなら、取り崩しの開始を遅らせることもできるでしょう。
定年の年齢や再雇用が終わる時期を勤務先の規程で確かめてから決めると、計画のずれが小さくなります。
NISA口座以外に置いてある現金の額
3つ目に、NISA口座の外に置いてある現金の額を確認します。
手元に現金があれば、相場が下がった時期に新NISAの資産を売らずに済むためです。
急な出費に備えて手元に置いておく現金を、生活防衛資金と呼びます。
生活防衛資金として用意する金額は、家族構成や収入の安定度によって変わります。
たとえば毎月の生活費が30万円で、半年分を用意すると決めた場合は180万円です。
生活防衛資金が足りない場合は、積立額の一部を預金に回して現金を増やすことも検討してください。
新NISAの資産を取り崩す4つの方法

新NISAの資産を現金にする方法は、主に4つあります。
毎月の受取額を一定にしたいのか、資産を長く残したいのかによって、適した方法が変わります。
まずは4つの方法の違いを表で確認しましょう。
| 方法 | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 定額取り崩し 毎月同じ金額を売る | 生活費の不足分を毎月補いたい人 | 値下がりした月は売る口数が増える |
| 定率取り崩し 残高の一定割合を売る | 資産をできるだけ長く残したい人 | 受取額が年ごとに変わる |
| 一括売却 目標額に届いたら全部売る | 使う時期と金額が決まっている人 | 売ったあとの値上がり分は受け取れない |
| 配当金と分配金の受け取り 資産を売らずに配当金と分配金を受け取る | 保有している株数や口数を減らしたくない人 | 受取額が企業や運用会社の判断で変わる |
毎月決まった金額を売る定額取り崩し
定額取り崩しは、毎月5万円など、決まった金額を売って受け取る方法です。
毎月の受取額が変わらないため、公的年金で足りない生活費を補う計画が立てやすくなります。
一方で、相場が下がった月にも同じ金額を売らなければなりません。
値下がりしている月は、投資信託1口あたりの価格が下がっています。
同じ5万円を受け取るには、値上がりしている月より多くの口数(投資信託を持っている量の単位)を売ることになります。
売る口数が増えるほど残りの資産は早く減るため、受取額は控えめに設定しておくと安心です。
残高の一定割合を売る定率取り崩し
定率取り崩しは、資産残高の一定割合を毎年売って受け取る方法です。
割合の目安には、「4%ルール」にちなんで4%がよく使われます。
4%ルールのもとは、1998年に米国トリニティ大学の教授らが発表した研究です。
研究は株式中心の資産なら、年4%程度の取り崩しで資産が尽きにくいと示しました。
ただし研究の計算方法は、毎年の残高に4%をかける定率取り崩しとは異なります。
割合を4%にした場合、残高が1,000万円なら1年目の受取額は40万円です。
翌年に残高が1,100万円に増えていれば44万円、900万円に減っていれば36万円を受け取ります。
残高が減った年は受取額も減るため、資産が尽きにくいといえるでしょう。
受取額が年ごとに変わるので、生活費に充てる場合は受取額が減った年への備えが必要です。
目標額に届いたら全部売る一括売却
一括売却は、資産が目標額に届いた時点で、保有している分をまとめて売る方法です。
教育費や住宅の頭金のように、使う時期と金額が決まっている場合に適しています。
たとえば「5年後までに300万円」と決めておき、300万円に届いた時点で全額を売れば、以降の値下がりの影響を受けません。
一方で、売ったあとに相場が上がっても、値上がり分は受け取れません。
目標額に届いてから使うまでに数年ある場合でも、売却して預金に移しておけば、使える金額が確定します。
配当金と分配金だけを受け取る
資産を売らずに、配当金と分配金だけを受け取る方法もあります。
配当金は企業が利益の一部を株主に支払うお金で、分配金は投資信託が決算時に投資家へ支払うお金です。
資産を売らないため、保有している株数や口数は減りません。
ただし配当金や分配金の額は、企業や運用会社の判断で増えたり減ったりします。
投資信託は、分配金を支払った分だけ価格(基準価額)が下がる点にも注意が必要です。
上場株式の配当金をNISA口座で非課税にするには、証券会社を通じて受け取る「株式数比例配分方式」を選ぶ必要があります。
株式数比例配分方式を選んでいないと配当金に約20%の税金がかかるため、口座の設定を確認しておきましょう。
新NISAを売るタイミングを決める3つの基準

新NISAを売るタイミングは、あらかじめ決めた基準に沿って判断すると迷わずに済みます。
基準にしやすいのは、支出の予定、目標金額、資産の配分の3つです。
3つの基準を使えば、相場の予想に頼らずに売る時期を決められます。
教育費や住宅資金が必要になったとき
1つ目の基準は、教育費や住宅資金を支払う時期です。
支払う時期と金額は数年前から分かるため、相場に関係なく売る時期を決められます。
たとえば子どもの大学入学が3年後なら、3年かけて少しずつ売り、入学の半年前までに必要額を現金にしておくと安心です。
支払いの直前にまとめて売ると、その時期に相場が下がっていた場合に必要額が足りなくなるおそれがあります。
時間をかけて分けて売れば、売る時期が1回に集中しません。
使う予定が近い資産から順に売ると、計画どおりに資金を用意しやすくなるでしょう。
目標金額に届いたとき
2つ目の基準は、あらかじめ決めた目標金額に資産が届いたときです。
目標金額を先に決めておくと、「もっと上がるかもしれない」と売る時期を先延ばしにせずに済みます。
たとえば老後資金の目標を1,500万円と決めていた場合、1,500万円に届いた時点で一部を売り、預金に移す方法があります。
目標に届いた資産をすべて売る必要はありません。
使う時期が先であれば、目標額を超えた分だけを売る方法も考えられます。
大切なのは、売る金額と売る条件を数字で決めておくことです。
資産の配分が崩れたとき
3つ目の基準は、株式と預金などの資産の割合が、最初に決めた配分から大きくずれたときです。
株価が上がると資産全体に占める株式の割合が増え、値下がりしたときの損失も大きくなる点に注意が必要です。
たとえば株式6割・預金4割と決めていた人の株式の割合が8割に増えたら、株式の一部を売って6割に戻すことになります。
配分を元に戻すことをリバランスと呼び、値上がりした資産を売るため、利益を確定しながら損失の幅を抑えられます。
年に1回など確認する時期を決めておくと、配分のずれに早く気づけるでしょう。
新NISAで売却した分の非課税枠が復活する条件

新NISAには、税金をかけずに投資できる金額の上限(非課税枠)が決まっています。
資産を売ると、使った非課税枠が翌年に戻ります。
ただし戻る金額と1年間に使える金額には決まりがあるため、売ったあとに買い直す予定がある人は確認しておきましょう。
翌年に簿価の分だけ枠が戻る
簿価(ぼか)とは、資産を買ったときの金額のことです。
新NISAで資産を売ると、売った資産の簿価の分だけ、売った年の翌年に非課税枠が戻ります。
戻る枠は、売ったときの金額にかかわらず、買ったときの金額で決まります。
たとえば100万円で買った投資信託が150万円に値上がりしてから売っても、翌年に戻る枠は100万円です。
80万円に値下がりしてから売った場合も、戻る枠は100万円になります。
| 買ったときの金額 (簿価) | 売ったときの金額 | 翌年に戻る枠 | |
|---|---|---|---|
| 値上がりして売った場合 | 100万円 | 150万円 | 100万円 |
| 値下がりして売った場合 | 100万円 | 80万円 | 100万円 |
生涯で使える非課税枠の1,800万円も、簿価で計算されます。
資産が値上がりしても、使った枠が増えることはありません。
1年間に使える枠は360万円までにとどまる
非課税枠が戻っても、1年間に投資できる金額には上限があります。
2026年9月時点の年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、合計360万円です。
つみたて投資枠は国が定めた条件を満たす投資信託を積み立てる枠、成長投資枠は株式や投資信託を幅広く買える枠です。
たとえば1年間に500万円分(簿価)を売った場合、翌年には500万円分の枠が戻ります。
戻った500万円分のうち、翌年に使えるのは360万円までで、残りの140万円分は翌々年以降に使うことになります。
売った資金をすぐに全額買い直すことはできないため、売る金額と買い直す時期を合わせて考えておきましょう。
新NISAの売却益に税金がかからない範囲

新NISAの口座で出た利益には、税金がかかりません。
一方で、損失が出たときの扱いは、利益に税金がかかる課税口座(特定口座や一般口座)と異なります。
利益と損失それぞれの扱いを確認しておきましょう。
NISA口座の利益は全額が非課税になる
新NISAの口座で資産を売って出た利益(売却益)は、金額にかかわらず全額が非課税です。
課税口座で同じ利益が出ると、20.315%の税金がかかります。
20.315%の内訳は、所得税と復興特別所得税が合わせて15.315%、住民税が5%です。
| 新NISA口座 | 課税口座 | |
|---|---|---|
| 売却益 | 100万円 | 100万円 |
| かかる税金 | 0円 | 20万3,150円 |
| 手元に残る利益 | 100万円 | 79万6,850円 |
引用:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁
売却益が大きくなるほど、新NISA口座と課税口座で手元に残る金額の差も広がります。
損失が出ても他の口座と損益通算はできない
新NISAの口座で出た損失は、税金の計算上はなかったものとして扱われます。
そのため、他の口座の利益と損失を差し引きして税金を減らす「損益通算」はできません。
損失を翌年以降に持ち越して利益と差し引く「繰越控除」も使えません。
たとえば新NISAで30万円の損失、特定口座で30万円の利益が出た場合でも、特定口座の30万円には6万945円の税金がかかります。
値下がりした資産を売るときは、損失を他の利益と相殺できない点を踏まえて判断しましょう。
暴落したときに新NISAを取り崩す方法

取り崩しの時期に株価が大きく下がると、同じ金額を受け取るために多くの資産を売ることになります。
暴落の時期でも資産を減らしすぎないために、売り方と現金の準備を決めておきましょう。
一度に全額を売らずに回数を分ける
取り崩しの時期に暴落が重なったときは、売る金額を何回かに分けます。
一度にまとめて売ると、相場が底に近い時期にすべてを売ってしまうおそれがあるためです。
たとえば300万円が必要な場合、毎月50万円ずつ6か月に分けて売れば、売る時期を分散できます。
6か月の間に相場が戻れば、後半に売る分は高い価格で売れる可能性があります。
反対に下がり続けた場合でも、全額を最安値で売る事態は避けられるでしょう。
必要な金額を支払日の半年ほど前から分けて売り始めると、暴落の影響を小さくできます。
生活費の2〜3年分を現金で用意しておく
取り崩しを始める時期には、生活費の2〜3年分を預金などの現金で用意しておきます。
現金があれば、暴落している間は現金から生活費を払い、新NISAの資産を売らずに相場の回復を待てるためです。
たとえば毎月の生活費のうち年金で足りない額が10万円なら、2年分で240万円、3年分で360万円が目安です。
相場が回復したあとに新NISAの資産を売り、使った現金を補充しておくと、次の暴落にも備えられます。
なお、相場が2〜3年で回復するとは限りません。
現金の額を決めるときは、回復まで時間がかかる場合も想定しておくと安心です。
年代別に変わる新NISAの出口戦略

新NISAの出口戦略は、取り崩しを始めるまでの年数によって変わります。
40代と50代では、使う目的と運用できる期間が異なるためです。
年代ごとに、出口戦略を立てるときの考え方を紹介します。
40代は教育費と老後資金を分けて管理する
40代の出口戦略では、新NISAの資産を教育費用と老後資金用に分けて考えます。
子どもの大学進学と定年では、お金を使う時期が10年以上離れていることが多いためです。
たとえば45歳で子どもが10歳なら、大学入学は8年後の53歳、65歳の定年までは20年あります。
教育費用の資産は入学の数年前から少しずつ売り、老後資金用の資産は売らずに運用を続けます。
教育費用と老後資金用の資産を同じ口座で管理する場合は、教育費に使う金額をメモなどで決めておくと、老後資金まで取り崩す事態を防げるでしょう。
50代は取り崩しを始める年齢から逆算する
50代の出口戦略では、取り崩しを始める年齢を決め、そこから逆算して計画を立てます。
運用できる期間が40代より短く、値下がりしたあとに回復を待つ時間が限られるためです。
たとえば55歳の人が65歳から取り崩す場合、運用できる期間は残り10年です。
取り崩しの5年ほど前から株式の割合を少しずつ下げて預金を増やしておくと、直前の暴落で資産が減る事態を避けやすくなります。
何歳から、毎月いくら、何年かけて取り崩すかを数字で決めておきましょう。
新NISAの出口戦略に関するよくある質問

新NISAの出口戦略について、検索されることの多い質問に回答します。
Q.60代から始めても出口戦略は間に合いますか
A.60代から始めても間に合います。
新NISAは18歳以上であれば年齢の上限なく利用でき、非課税で持てる期間も無期限です。
60代から始める場合は運用できる期間が短いため、取り崩しの開始時期と生活費2〜3年分の現金を先に決めておきましょう。
Q.旧NISAで買った資産はどうすればよいですか
A.2023年までの一般NISAは購入から5年間、つみたてNISAは20年間、非課税のまま保有できます。
非課税期間が終わる前に売るか、終わったあとに課税口座へ移すかを選ぶ必要があり、新NISAへ移すことはできません。
旧NISAの資産は新NISAの1,800万円とは別枠で管理されるため、新NISAの非課税枠は減りません。
Q.新NISAを売ったら確定申告は必要ですか
A.新NISAの口座で出た売却益は非課税のため、確定申告は必要ありません。
ただし、同じ年に特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で利益が出た場合は、課税口座の利益について確定申告が必要になることがあります。
判断に迷うときは、利用している証券会社か税務署に確認してください。
まとめ|新NISAの出口戦略で後悔しないために
新NISAの出口戦略は、積み立てた資産を「いつ・いくら・どうやって売るか」を先に決めておくことです。
新NISAは非課税で持てる期間が無期限のため、売る時期と金額は自分で決める必要があります。
取り崩す方法は、毎月同じ金額を売る定額取り崩しや、残高の4%などを売る定率取り崩しを含めて4つです。
売った資産の非課税枠は翌年に簿価(買ったときの金額)の分だけ戻りますが、戻った枠を使えるのは年間投資枠の360万円の範囲内です。
まずは使う予定の金額、取り崩しを始める年齢、手元の現金の額の3つを書き出し、自分に合う売り方を決めましょう。

